オオキバナカタバミ(カタバミ科カタバミ属)・もう一組のおしべ

花 葉 花の付け根

直径3cm以上もある大きな花をつけ、葉には暗色の斑点があるきれいな花で、園芸植物として輸入されたものが逃げ出し最近では道端などで見かけることもあります。5枚の花弁をそっと持ち上げると花の形のままで取る事ができます。根元は5つに別れていますが花弁の基部は1枚につながっているからでしょう。カタバミ科の花は離弁花になっていますが、合弁花に思えました。

雌しべと雄しべ萼と花弁を取り去ってみました。5本の柱頭があるめしべを囲んで、長いおしべ5本が花弁と互生しています。その外側に短いおしべが5本あります。
更にその外側に花糸とよく似た色のものが5本並んでいました。これは一体何なのか? 気になってしかたありません。手近なカタバミの仲間を覗いて見ましたが、今のところオオキバナカタバミとフヨウカタバミ、イモカタバミにもありました。
(コミヤマカタバミ、カタバミ、ウスアカカタバミ、アカカタバミ、ムラサキカタバミ、ベニカタバミにはありませんでした。)


田中肇さんに教えていただき見つめなおしてみました。

「日本の野生植物U」(平凡社)のカタバミ科の項に『雄蕊は5本ずつ2輪または3輪に並び、基部は短く合着して単体雄蕊になる』とあります。言い換えると、雄蕊は10本または15本あることになります。日本にはカタバミ科の植物はカタバミ属しかありませんが、すべて雄蕊が10本です。

よく見ると、「?」は短い雄しべと短いおしべの間にあります。そこで短い雄しべをどけてみました。長い雄しべの花糸とくっついているのが分かります。
退化した雄蕊 退化した雄蕊 退化した雄蕊

葯をどけるこの「?」は退化した雄蕊と考えられるようです。
それでは・・・と長短10本の雄蕊から葯をどけてみました。なるほど長さが違うので太さに差は出ますが、形は似ていました。

雄しべと退化おしべ輪切りにしてみると15 本はみんな質感が同じでした。


5本の柱頭は花が咲いているときは開いていますが、花が終わる頃にはすぼんできます。
今のところオオキバナカタバミでは短花柱花しか見て居ません。このタイプだけが日本に入ってきたのかもしれません。原産地の南アフリカではどうなのでしょう。
柱頭 柱頭

田中肇さん

ご存知の方がほとんどでしょうが、花と昆虫の関係を詳しく調べていらっしゃるフラワーエコロジストです。私などは一つ一つの花の構造を見ると、どうしてこんなにややこしい事を思いついたのかと戸惑うのですが、そういうことを分かりやすく解説してくださったご本をたくさん出していらっしゃいます。
私が最初に手にしたのは山と渓谷社の『花の顔』でした。それ以来ずっとはまってしまっています。

(2004.3.18 3.26一部修正)

オオキバナカタバミの退化した雄蕊    帰化植物