ツメクサダマシ(マメ科シャクジョウソウ属

2002年7月13日、ハナハマセンブリの大群落や、アカバナルリハコベが咲いていた近くで、とてもきれいなモモイロシロツメクサ(シロツメクサの花がピンク色のもの)が咲いているのに気が付きました。濃いピンクの絨毯のようで遠くからでもとても目立ちました。思わず走り出しました。
ツメクサダマシ
近くで見るとモモイロシロツメクサよりも色が濃く、花が小さいのです。
(花序の直径はシロツメクサは15mmくらい この花は9mmくらいです)日差しが強いから? 風が強いから? 土の性質が他と違うのだろうか? 色々考えましたが納得できません。
よく見ると、シロツメクサの仲間だったら咲き終わった花が下を向いているはずなのに、この花は上を向いたままでまるで、ムラサキツメクサのような状態でした。

家に戻って図鑑をひっくり返しました。どうもツメクサダマシという草らしい。

ツメクサダマシだったら実の形に特徴がある、花序の下に総苞(花序全体に付いている萼のようなもの)があると分かりました。『神奈川県植物誌2001』を引っぱり出すと「1939年に神奈川県で見つけられた帰化植物だが、その後神奈川県では見つかっていない」とありました。ドキドキしてきました。

気になったので15日にもう一度。・・・ところが「あぁ!」草刈り機でせっせと草刈りの最中です。「待って待って! この草少し下さい」お願いして持ち帰りました。確かに、総苞はあるし実は白い毛に包まれたちょっと気味の悪い形をしていました。

根は残っているのだからまた咲いているかもしれない。改めて8月8日に未練たらしく出掛けました。残っていました!
今度は果実もかなり大きくなって、果実の中に熟した種子が1個ずつ入っているのもありました。

総苞が分かるように花序を下から覗いてみました。左がシロツメクサ。真ん中がツメクサダマシ、右はツメクサダマシの花をとって、総苞だけにしてみたものです。ちなみに花は一つの花序に54個付いていました。
シロツメクサには短いけれど花柄があるのが分かります。花柄があるから花が終わると下を向くようになるのです。

シロツメクサ ツメクサダマシ 総苞
ツメクサダマシの花は下の方から咲き始めます。咲き始め時は花序は丸っぽいのに、咲き進むにつれ縦長になってきます。 咲き始め 咲き進むと

花の大きさは長さ6mm。萼は3-4mmで、萼裂片は長さ1.5mm程度でとても細くなっていました。上唇は2裂し白い毛がたくさん生えています。下唇は3裂して無毛です。裂片は5つともほぼ同じ長さでした。

果実 果実 花が終わると萼の上唇がどんどん大きくふくらみます。この萼には網目模様があり白い毛も生えています。茶色く突き出しているものは枯れはじめた花です。(右側の写真をクリックすると大きな写真が見えます)

種子が熟す頃の果実は 最大幅1.3cm 長さ1.8cmありました。一つずつの実がふくらむためにこんなに大きくなるのでしょう。

果実 種子 果実を一つ取りだしてみました。ふっくらとした部屋の中に茶色の種子が一個入っています。

茎が伸びると横に倒れ、土に触れた節から根を出しやがて花を咲かせます。このようにして生息範囲をどんどん広げていきます。托葉のイメージもシロツメクサとは違う気がしましたがなんと表現して良いか分かりません。葉柄や花柄にはシロツメクサと違い、白い毛が生えています。葉裏にも主脈付近に白い毛がたくさん生えていました。(シロツメクサは全草無毛)
今回見つかったものは1939年に見つかった花が、人知れず生き残っていたのではなく、人工的に植えられた芝生に、種子が混ざっていたのではないかと思います。


種子の散布方法

発芽9月12日、改めて友人と現地に行って来ました。花はもう少なくなっていましたが発芽の仕方で面白いことに気が付きました。
種子が熟す頃になると花茎が付け根付近から倒れ、萼に包まれたままの果実が地面にくっつきます。萼をつらぬいて種子が根を出し始めており、小さい3小葉がいくつも発芽していました。
近くにあるシロツメクサ、ムラサキツメクサでは果実になったものも直立したままで熟した種子は一つずつ地上に落ちます。ツメクサダマシは一つ一つの実が深い袋状の萼に包まれているので、種子をこぼしにくいのでしょうか。もしかしたら発芽時の乾燥防止、そしてやがては栄養分として袋状の萼が役に立っているのかもしれません。
(画像をクリックすると大きな画像が見えます)

2002.8.8作成 9.12一部追加

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