ツキミソウ(アカバナ科マツヨイグサ属)

10年以上前に種子を頂いたツキミソウ。毎年夏が近づくと日没寸前に白い花を開き翌朝にはすぼんだ花がきれいなピンクになります。花が咲くと100%結実して多数の種子をつくります。
同じアカバナ科で夕方から黄色の花を咲かせるマツヨイグサの仲間達は、送粉昆虫として蛾が来ることが知られています。
我が家でも私が気付かない時に蛾などがたくさん来いるのでしょうか。

ツキミソウ 開いたばかりの花 4月19日17:45 白く膨らんできた蕾の前で待ちました。この仲間の花粉は糸でつづられてネックレスのようにつながっています。
花弁を開ききったばかりの花でもすでに花粉は柱頭にすこしついていました。

柱頭の形の変化

左: まだ白い花弁が見えてこない固い蕾の中では、4本の柱頭は固まるように上を向いています。雄しべもまだ花粉を出していません。
中央:開花間近の白い花弁が膨らみ始めた蕾の中では、4本の柱頭は少し開き始め雄しべも花粉をかなり出し一部は柱頭にくっつき始めています。
右:花が開くと4本の柱頭は水平近くに広がります。

(画面は横向きになっていますが、左側が花の上部です)

固い蕾のしべ 白くなった蕾のしべ 咲き始めた花

自家受粉している様子

自家受粉をしているかどうか確かめるため、開花直前の蕾を室内に持ち込み、しべの様子を見るために花弁を取り除きました。
柱頭の開き方はどんどん大きくなり、明け方になると少しずつ反り返ってきました。
翌日から大きくなり始めた実はどんどん育ち種子も茶色に熟しました。

しべの変化1 しべの変化2 しべの変化3


自然状態では咲き終わった花は花弁が元の形にまきもどります。その花弁に包み込まれるように更に花粉は柱頭に押し付けられていきます。 咲き終わった花 咲き終わった花

柱頭と花粉

左:咲く寸前の蕾の柱頭です。柱頭液が少し出ています。
中央:満開時の柱頭です。全体がつやつやと光って見えるほど柱頭液が沢山出ています。
右:花粉。一つずつの花粉が中央部が少しくぼんだ三角形をしていました。花粉は丸か楕円形と思っていた私はビックリしました。

蕾の柱頭 満開時の柱頭 花粉

戸外での実験

ネットをかぶせた状態戸外に咲いたままで昆虫が来ないようにしたらどうなるか、一晩ネットをかぶせました。
その後、色々な条件の花の種子を数えてみました。
 何もしなかった花(8花の平均)605.38個
 ネットの中で咲いた花(4花の平均)607.25個
 別の株の花粉をつけた(2花の平均)661.50個
違いがあるのかどうかは私には分かりませんが、いずれの場合も多数の種子をつくりました。

果実の開き方

雨が降るとツキミソウの果実は開いて沢山の種子が現れます。雨で流れた種子が茎や葉についているのも見かけます。そこで硬く閉じた果実にスポイトで水を少しずつかけてみました。10滴たらずで果実は完全に開き、水をかけるのをやめたら30分程度で元の形にすぼみました。
乾燥しているときの種子はサラサラしていますが、水で濡れると種子は粘着性が強まり指についた種子は落としにくいくらいになります。濡れている間に動物の体についたりして乾燥するまでのあいだに遠くへ運んでもらう戦略なのでしょう

熟した実 開き始めた実 開いた実

ツキミソウのほか、アカバナユウゲショウ、コマツヨイグサでも自家受粉もしていることを観察しました。

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(2007.7.8)