キダチアロエ(ツルボラン科アロエ属)

冬になると赤い花を咲かせるキダチアロエ。この花は市販のハチミツを倍に薄めた程度の粘りけのある蜜をたくさん出します。かなり甘いので原産地ではおやつに食べることもあるそうです。こんなに濃かったら蝶の口がつまってしまわないかと思うほどです。よくしたものでメジロがこの花の穂につかまって下から花をのぞき込むようにして蜜を吸います。でもメジロは花の中までは首を入れていません。花も無理にこじ開けられた様子はありません。
したたる蜜 通りすがりに見るだけでは分からなかったので友人から一枝分けていただきました。室内に20時間くらいそっと置いておくと、うつむいた花の先に蜜が滴るように集まってきました。メジロはこうしてあふれ出てきた蜜を吸っていたのでしょう。 したたる蜜したたる蜜
瓶入りのハチミツだって逆さにすればもっと早く落ちてきます。下を向いて咲いている花なのにたくさんの蜜が、一気に流れ落ちてしまわないのは何故なのか不思議になってきました。
花の根元 花被片のつけね 花弁は6枚あり外側の3枚(外花被片)は内側の3枚(内花被片)より色が濃いのですが、6枚とも根元でカーブしています。花弁が作ったコップの中に蜜がたまっていました。
雌しべを囲む雄しべ おしべの内側に光る蜜 6本の雄しべ

中心にある子房を囲んで、根元でカーブした6本の雄しべが壁のように並んでいました。

6本の雄しべの花糸はやや平たく幅が広くなっています。よく見ると長くてやや細い雄しべと短くてより太い雄しべが3本ずつあり、交互に並んでいます。この雄しべで囲まれた筒状の中にも蜜が流れ込んでいます。
太さの違う6本の花糸、しっかり重なり合った6枚の花被片が、蜜の濃度や粘り気とつりあって、蜜は一気に流れ落ちることなく少しずつ下がってくるようになっているようです。
そのおかげでメジロは花を壊さずにご馳走にあずかれる、花は受粉をしてもらえることになります。昆虫の少ない冬に咲くので蜜の濃さ、量の多さもメジロ向きです。鳥媒花としてかなり工夫しているなぁと、感心しました。

(2004.01.01)

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