表題


ラン科の花の雌しべと雄しべは特別な形をしていて、蕊柱(ずいちゅう)と呼ばれる。と本で読んではいましたがなかなか理解できませんでした。
そこで鉢植えのシンビジュームの花をのぞいて見ました。

正面から見たとき目に付く白い帽子のようなもの(葯帽と書かれた本もあります。)の内側に花粉が入っていてうっすらと黄色く見えます。
この、白い帽子はまるで箱のふたのように簡単に取れてしまいます。

花

花を正面から見たところ

蕊柱

蕊柱を少し横から見たところ

白い帽子を取り除くと、鮮やかな黄色の花粉塊(かふんかい:花粉が固まりになっているもの)が
2個見えます。
花粉塊のすぐ下に、カエルの口のように空いている穴があります。これが柱頭(ちゅうとう:雌しべの先端、花粉をもらうところ)です。

「雌しべが雄しべをおんぶしている花」と聞いたことがありますが、なるほど!

葯帽をはずしたところ

花粉塊と柱頭

花粉塊

花粉塊のアップ

ピンセットでちょっと触れると、花粉塊の土台のようなところがピンセットにはりついてはずれます。ピンセットからはずすのが一苦労でした。
ラン科の花はこのくっつきやすさを利用して昆虫に花粉を運んでもらっているそうです。
室内に置いてあるシンビジュームには何の昆虫もやってきません。自生地ではさぞにぎやかに昆虫が出入りしているのだろうと想像しています。

1輪の花に犠牲になってもらったのだからと、あれこれ見てみました。肉眼では気がつかなかったこんなきれいな物がありました。

蕊柱のねもと

蕊柱のねもと

唇弁の毛

唇弁(蕊柱の手前の花弁)の赤いところ

(2005.3.13)


ものは試しと、柱頭に花粉塊を押し込んでみました。
そして10日ほどたって気がついたら、花の色がこのように変わっていました。(3月22日)
蕊柱も唇弁も赤が濃くなっています。もしかしたら受粉がすんだ花に昆虫がおとづれるという無駄を避けるために「この花はもう終わり。別の花に行ってください」という合図なのではないでしょうか?
自分自身の花粉をつけたので、種子ができるかどうかはわかりません。できるとしても何ヶ月か先のお話になります。気長に待つことにしましょう。

花粉を受け取った柱頭は口をすぼめまてしまいます。不必要にたくさんの花粉はいらないということなのでしょうか?
4月22日 受粉させてから40日目。子房はこんなに太くなりました。
7月16日 熟してきた果実は黄色くなってきました。けれど7月25日にはシランなどのように茶色になって割れる前に黄色のままで落ちてしまいました。

受粉後の花
3月22日(受粉後の花)
受粉後の柱頭
受粉後の柱頭
ふくらんできた子房
4月 22日(ふくらんできた子房)
熟し始めた果実
7月16日(熟し始めた果実)

(2005.7.25)
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