エゴノキにできた虫こぶ

今年は虫こぶの当たり年? と思うほどエゴノキに虫こぶが沢山つきました。
2007年7月19日友人達と一緒に観察をしていて非常に珍しいものを見つけました。

エゴノネコアシフシ

エゴノネコアシフシエゴノネコアシフシ
枝先に花が開くような形でついています。猫の足に似ているのでこの名前があります。
エゴノネコアシアブラムシがエゴノキの側芽につくります。
一つの膨らんだ部屋の中にアブラムシの幼虫が1匹。
入れなかったアブラムシは兵隊みたいに防衛役になるそうです。

エゴノネコアシフシ沢山ついている中にはきれいなものと、灰色ぽくなって粉をふいたように見えるものがありました。

エゴノについた大きな虫こぶ

位置ふと見上げると高いところに変なものがついていました。鳥の巣、カマキリの卵ではないようです。双眼鏡で見ると枝分かれしたサンゴのような灰色の塊でした。
高枝切りで枝ごと切り取って観察してみました。

大小の虫こぶ縦横16cm程度のほぼ球形をした虫こぶです。
大きさが分かるように普通のエゴノネコアシフシと並べて見ました。

大きな虫こぶの一部近づいて見ました。
あちらこちらに孔が開いていました。どうやら虫こぶのようです。
この虫こぶもエゴノネコアシフシと同じように、灰色っぽい部分がありました。

大きな虫こぶの一部別の部分の拡大です。

枝を水にさしておいたら多数のアブラムシが出てきました。黄色い翅が無いものと、黒い翅のあるものがいました。
何であるか分からなかったので、博物館に郵送したところ、先生方が色々調べてくださいました。


(ここから先はすべて諸先生方のお骨折りで分かったことです)

エゴノキとヤドリギを行き来しているアブラムシが作ったものに似ているといういことで、それを専門に研究されている立正大学の青木重幸先生に問い合わせをしてくださいました。
そしてTuberaphis coreana (Takahashi)のゴールではないかとのお答えをいただきました。

このタイプの虫こぶは1986年に茅ヶ崎で、50年ぶりに再発見され、タケノウチエゴアブラムシ(コナジラミモドキ属)が作ったものと同定されたました。
当時の詳細は薄葉重先生の「虫こぶ入門」(八坂書房)に書かれています。
アブラ虫の生態などは全く知らないので以下は私に分かる範囲での抜粋です。

1933年11月、大分県の耶馬溪で発見されたのが最初。
1986年11月に茅ヶ崎で再発見された。 2002年渋沢で発見された。

このアブラムシは一次寄主(そこで有性生殖がおこなわれる)と二次寄主(単性生殖だけがおこなわれる)との間を往復して生活している種類で、その関係が分からないうちはそれぞれが別の種として記載されていることもあるそうです。この虫こぶの場合、エゴノキが一次寄主になります。
(そういえばエゴノネコアシフシを作るアブラムシがアシボソ(イネ科)と往復していると聞いたことがあります。似たような関係なのでしょう)

その後研究が進み、エゴノキで生まれた幼虫によく似た幼虫がヤドリギの虫こぶの中に居ることがわかり、更にアブラムシの腹部にある菌細胞の中に細胞菌があるか無いかなど・・・からヤドリギアブラムシ属(Tuberaphis)に入ることに決まったそうです。

神奈川県立生命の星・地球博物館の出川先生、平塚博物館の浜口先生に大変お世話になりました。有難うございます。

参考文献

「虫こぶ入門」 薄葉重著 八坂書房

(2007.7.28)

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