巻きひげの巻き方

友人たちと巻きひげについて考えました。 「ヘチマの巻きひげは途中で巻き方が逆になっている。
ノブドウやヤブカラシ、カラスウリもそうなっている。
ひげが巻くのはひげの片側の細胞だけが生長(肥大)する事によるそうだが、中央で巻き方を反転させるのがエネルギー的に一番安定するのだろうか?」仮説を立て、調べてみました。

写真はカラスウリの巻きひげです。13回ずつ巻いて真ん中で方向が変わって居ます。枝分かれして上へ向かう方は10回ずつで向きを逆にしていました。

カラスウリの巻きひげ
カラスウリ
  • 巻きひげは最初から巻きながら伸びるのではなく、真っ直ぐなまま螺旋状の旋回運動をしながら伸び何かに触れた時に先端がからみつく。
    • 簡単に言うと、首をクルクル振り回しながら捕まる先を求めて伸びていくのです。
    • たしかにカラスノエンドウやウリ科の巻きひげは最初真っ直ぐです。ひげの先端をそっとこするとそれが刺激になって巻き始めます。
  • 根本と先端が固定された状態で巻きひげは成長を続け少しずつ長くなる。
    • 伸びる理由は、ひげを作っている細胞が一つずつ肥大するからです。このとき片側の方がより多く肥大するので回り始める。
  • 長くなったひげが巻き始めると途中で向きが変わるのは物理的に理解できる(この点については後述します)
  • そうであれば右巻きと左巻きの数は同じになるはずだ。
  • 螺旋状になっていれば、風が吹いて多少揺れても伸び縮みできるから巻きひげは切れずに植物体を支えることが出来る。
    • 途中で反転しないで朝顔の蔓のように全部同じ方向に回っていたらひげが伸びたときに根元(茎側)に力が集中して切れやすくなる(これも後述します)

両端が固定されていたらどうして巻き方が途中で逆になるのか???

巻きひげに近づいてみましょう。赤く着色してある側が螺旋の外側です。

大縄飛びを思い出して下さい。左右の二人が縄を回します。このとき二人が勝手気ままに回せば縄は不規則にゆがみながら動くだけです。二人の方向が一致すればきれいに円を描きます。
巻きひげの場合は先端が刺激を受けてねじれが始まります。
巻きひげは細胞が肥大して伸びていきますが、縄跳びにたとえたら縄を持つ人が少しずつ近づいて行くのと同じことになります。
近づくときに少しずつ腕に縄を絡ませていきましょう。そうすると左右の人が握手できるまでにはそれぞれの腕に絡まる縄の絡み方は向きが反対になることが分かります。
ちょうど真ん中辺りです(矢印のところ)。これを螺旋の「反旋点」と呼びます。巻きひげの太さが均一であれば1本の巻きひげでは右巻きと左巻きが同じ回数になります(カラスウリはこのタイプです)。
ただ、実際には巻きひげも根元の方が太いものが多く、そういう場合は根元の方が巻き数が少なくなります。
反旋点

途中で巻き方が反転しているとどうして丈夫なのか?

反転しなかったら まず途中で反転しない場合です。実際には両端が固定されているときは上で説明したように、このようには巻けませんが比較のために考えてみましょう。
風などにより茎と捕まっているものが遠くなったとき(下図)根元に渦巻きがギュウーッと集まってしまいその力が強すぎれば切れてしまいます。二本取りの糸でボタン付けをする時に糸のヨリをただしておかないとこんぐらかってしまい苛々した経験はおありだと思いますがそれと同じことが起こります。
途中で反転したら 途中で反転している場合はどうなるでしょう。左右一つずつの回転がほどけることによりほぼ一直線(実際には少し上下左右の波は残るけれど)になるので根元への負担が少なく切れにくくなります。

補足

アサガオの茎などは伸びながら巻いていくので下から上まで全部同じ方向に渦巻きが出来ます。
「反旋点」があることによって巻きひげに生じた「ひずみ」の力が解消されている。
巻きひげも長い物では途中に「反旋点」がいくつか出来て右左右左・・・と向きを変えているそうです。
捕まる相手が居なかったときの巻きひげは「老衰巻き」と呼ばれるそうで、とてもややこしい形をしているそうです。
(2001.12.22)
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