カテンソウとさび菌

カテンソウ(イラクサ科カテンソウ属)

カテンソウの群落 カテンソウはやや湿った山すそなどに群生する丈の低い柔らかな草です。私の家の近くには無く逗子、鎌倉、高尾山などで見かけると嬉しくなります。
風媒花のカテンソウは雄しべがピクンとはじける様に伸びる時にフッ、フッと小さく息をするように花粉を飛ばします。弾発型散布とでも言うのでしょう。

雄花

雄花の蕾 はじけた雄花 3月下旬、色々な段階の雄花が目立ちます。
左は蕾
右は花粉を飛ばした終えた花

田中肇著「花と昆虫、不思議なだましあい発見記」(講談社)によると、風媒花の花粉の長径の平均は31ミクロン、カテンソウの花粉の長径の平均hあ15ミクロンとの中でも半分以下と小さいそうです。花粉が小さいとそれだけ空中に長く留まっていられるので背丈の低い花でも、風が少ししか吹かなくても雌花まで飛んでいけるのだそうです。

雄しべは1本ずつ順番に外側へはじけるように伸び、その勢いで花粉を飛ばします。1本ずつ順番にはじけて5本全部がはじけるとすぼみはじめます。花粉が飛び出すところを撮りたかったのですが何回やっても失敗してしまいました。
雄しべの花糸はホースのようにくびれが入っています。

開き始め
(1)開き始めた
開きかけ
(2)さらに開き始めた
花糸
(3)花糸のくびれ
伸びた雄しべ
(4)1本目がはじけた
伸びた雄しべ
(5)すべての雄しべが伸びた
葯
(6)空っぽになった葯
残った花粉
(7)花粉が一部残っている
すぼみ始めた
(8)すぼみ始めた
残った花粉
(9)殆んどすぼんだ

友人のMさんが、一度開いた雄花は翌日にもう一度開くことを教えてくださいました。どうして? そこで改めて観察しました。
(7)のように時折花粉を弾き飛ばせない葯が残っていることがあります。生長が揃わなかった場合に備えてこの開閉運動を2日間するのでしょう。2日目に閉じた雄花はそのまま花柄から落下しました。

雌花

雌花 柱頭 雄花に較べ非常に小さい雌花は雄花の下の方の葉腋についています。
果実になる頃には花柄が伸びて少し目立つようになってきます。
果実 種子 実は熟しても小さいままです。
1つの果実の中に種子は1個ずつありました。

さび菌のついたもの

4月10日 カテンソウを見ていたら葉柄や葉の裏に橙色のツブツブがついていることがあるのに気がつきました。少し不気味なものです。虫の卵? 病気? ツブツブは上の方に孔が開いていて黄橙色の粉が沢山出ていました。

さび菌 さび菌 さび菌

神奈川県立生命の星・地球博物館の出川洋介先生に「カテンソウさび菌」だと教えていただきました。
担子菌門サビ菌網のPuccinia phaeospora Kakish. & Y. Ono, in Ono & Kakishimaで、1982年に日本人によって記載されたものだそうです。口が開いている形が「さび胞子堆」で黄色い粉が「さび胞子」。春にカテンソウに寄生し、夏になるとエナシヒゴクサに寄生するそうです。(本当はもっとややこしいお話なのですが、私にはカテンソウとエナシヒゴクサを行ったり来たりしている人間には無害な菌、と言う程度しか理解できませんでした)

(2007.8.16)
植物のページ