キブシ(キブシ科キブシ属)

キブシの雄株、両性株、雌株

雌雄異株と言われているキブシの花を良く見ると、雄しべの先の葯(花粉を出すところ)や、雌しべの先の柱頭(花粉を受けるところ)の見え方で4つのタイプに分けられます。

(1)雄花
葯だけが見える

(2)雄花
葯と柱頭が見える

(3)両性花
葯と柱頭が見える

(4)雌花
柱頭だけが見える
花期が一番早いのは雄花で、雄しべの方が雌しべより長く子房も小さい。花穂の長さは15-20cmと長いです。

(2)-(4)の花期は雄花より少し遅れます。

雌花には太った雌しべがあり、雄しべは小さく退化していて花粉を作らない。花穂の長さは3-9cm、花の大きさは他のタイプに比べると小さいです。

外から見たらよく似ている(2)と(3)はどこが違うのか?

左から(2)(3)(4)のタイプの花の中を見たところです。葯の高さに注目してください。

(2)は8本ある雄しべのうち4本は柱頭より高く4本は低くなっています。

(3)は雄しべは8本とも柱頭よりほんの少しですが低くなっています。較べるために雌花も並べてみます。

雌花は柱頭も立派で、雄しべはほんのお飾り程度です。

雄花
(2)雄花
両性花
(3)両性花
雌花
(4)雌花

子房の中を見てみると胚珠(中のツブツブ、種子のもと)が見えます。実際には子房の大きさは違いますが胚珠の様子を見るためになるべく写真の大きさを揃えてあります。

雄花から、雌花へと少しずつ子房の中がくっきりしているのが分かります。同じように見える花なのに雄花と、両性花があるのは花の中にこのような違いがあるからです。

雄花
(1)雄花
雄花
(2)雄花
両性花
(3)両性花
雌花
(4)雌花

花を分解しないで(2)と(3)を見分ける方法は?

(2)の形の雄花と、(3)の形の両性花、そして雌花(4)はほぼ同じ時期に咲いていますが次のような違いがあります。

  (2)の花穂の長さは7-15cmが多い。時には4cm程度の短いものもあるが同じ木により長い花穂もついている。

  (3)の花穂の長さは短く、2.5-4cmで、その株についている全てが短い。

  (1)の雄花はもちろん(2)の雄花も3月中旬になると花が1輪ずつポロポロとこぼれ落ちるが

  (3)の両性花と(4)の雌花は殆ど落ちないので、木の下を見ると区別できる。

    (花穂ごと落ちているのは、タイワンリスやヒヨドリなどの影響があるので区別点にはならない)

雌花と両性花はどうして花が落ちないのか?

雄花は花期が終わり、花粉を送る役目がすむと落花しますが、雌花と両性花は種子を作る前に落ちてしまうと何にもならないのでしっかりと花茎についています。
花の付け根を見ると、花の外から柱頭も葯も見えている花でも(2)と(3)ではこの程度に太さに差があります。雌花(4)はさすがにしっかりした付け根です。

雄花
(2)雄花
両性花
(3)両性花
雌花
(4)雌花

両性株についた実

2004年4月22日、木につけたマークを頼りに観察してみました。雄花をつけた株は花穂すら残っていません。
両性花をつけた株には果実がついていましたが、果実の数は花の数に比べると非常に少なくなっています。この時期残っている枯れかけた花は子房が小さいままで結実しそうにありません。
ほとんどの花が果実になっている雌株とはかなり様子が違います。果実の大きさにも差があり両性株のほうが小さいです。

雄株
両性株の果実と残った花
雌株
雌株の果実
比較
左:両性株 右:雌株

キブシには両性株があると聞いて2年前から探し続けていました。私の住む横浜市南部では、(1)のタイプの雄株は少なく(2)のタイプの雄株と雌株がたくさんありました。今のところ両性花((3)のタイプ)は2株しか見つけていません。
ネットで探した鹿児島大学・植物研究室の卒論(平成8年)によると、外から見て花粉がついている58株中、両性花をつけた株は8株(7.25%)でしたので、探せばもっと見つかるかもしれません。

前回観察してから10年近くたった2015年、横浜市では両性株が一番目につくようになりました。雌株がちらほらあります。純粋な雄株はめったに見かけなくなりました。
もしかしたら、キブシは雌雄異株から雌雄同株に変化している途中なのではないかと、素人の私は想像しています。

(2004.4.5 4.23 2015.4.7追記)
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