キンミズヒキ(バラ科キンミズヒキ属)

秋になると咲き始めるキンミズヒキ。
タデ科で赤い花をつけるミズヒキ、白い花をつけるギンミズヒキに花穂のイメージが似ていて黄色の花をつけるのでキンミズヒキと名づけられたバラ科の多年草です。
花の直径は1cm弱くらいです。
果実には鉤型に曲がった刺があり近くを通ると服にくっついてきます。動物や人にくっついて移動する付着型の実で「ひっつき虫」と呼ばれているものの一つです。

引っ付く仕組みをみてみました。

キンミズヒキ
キンミズヒキ
キンミズヒキの果実
若い果実

まず左の画像の花を見てください。小さな花ですが5枚の花弁とたくさんの雄しべ(8〜14本)。いかにもバラ科の花です。花弁と花弁の間から見えている緑色のものが萼です。

果実になるとまるで毛糸の帽子のような下向きの三角形。縁に刺がたくさんあります。

右の画像は蕾を横から見たところです。萼の外側に先が丸まった刺がたくさん見えます。図鑑によって副萼、後萼などと書かれていますが萼筒が変化したものです。キンミズヒキの萼は私達が食べるイチゴの萼のように5枚がくっついた形になっています。果実になる頃には果実(痩果)がすっぽりと萼、萼筒に包まれていて全体が果実に見えます。正式には「偽果(ぎか)」と呼ばれます。

キンミズヒキの花
キンミズヒキの蕾

上の左側にある花を斜め後から、真後ろから見てみました。
正面からだけ見ていると分かりませんがちゃんと萼筒の鉤型の刺が付いています。とげの先は丸まってまるで指を握り締めたような形をして居ます。
斜め後ろから見た花 真後ろから見た花

引っ付き虫になる仕組み

花が終わり果実になり始めた頃はまだ布で触ってもくっ付いてきません。少し時間がたつと布で軽く触れただけでくっ付いてきます。どこが違うのでしょう。
左はまだくっついてこない時期の果実の刺です。
右はチョッと触れるとくっついてくる時期の刺です。
中にある種子が熟して果実(偽果)が太ってくるにつれ刺と刺の間隔が広がってきます。丸まっていた棘の先端も少しずつ起きてきます。蕾の時から較べるとずいぶん曲がり方が減ってきているのが分かります。
まだ種子が未熟なうちは棘の先端が丸まっているのでひっつかない。熟してくるとこうして刺が四方八方へと拡がってくるので、どちらの方向から触られてもすぐにひっつくことができ、新たな新天地を求めて旅立つことができるのです。

まだ緑色をしていても引っ付いてしまう・・・でも心配はいりません。ここまで育っていれば地面に落ちてしばらくすると焦げ茶になり春には発芽することができるのです。

くっつかない時期の刺 くっつく時期の刺

果実(偽果)は萼と萼筒ですっぽり包まれていてこのままの形で地面に落ちます。
カミソリとピンセットで外側の部分を外すと、まぁるい本当の果実(痩果:そうか)が出てきます。
まるで果実の中にある種子に見えます。
偽果を半割りにして見ると真ん中にうっすらと筋が見え種子が2個入っていることが分かります。種子は半球状の形でした。

キンミズヒキの果実(偽果) キンミズヒキの痩果
キンミズヒキの偽果を半割り キンミズヒキの種子

ヒメキンミズヒキ 左の画像はよく似ているヒメキンミズヒキです。
キンミズヒキよりは暗い場所に生え一回り小型です。花は直径5〜7mm、花弁が細く雄しべは多くても8本くらいで見慣れればすぐに区別できますが、小型の果実はキンミズヒキそっくりの形で、やはり引っ付き虫になります。

(2008.11.3)
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