マメ科の蝶形花冠

マメ科の多くの花は「蝶形花冠」と呼ばれる美しい形をしています。
花が大きくて見やすいクズを見本に蝶形花冠の色々な名称を説明します。

正面から見たクズの花一番大きく目立つのが旗弁(きべん)。
 旗弁の根元にはマークがあることがほとんどです。
 このマークは昆虫に蜜のありかを教えるためのもので蜜標(みつひょう)と呼ばれます。
 旗弁の下に突き出すようになっているのが翼弁(よくべん)と、舟弁(しゅうべん)です。
舟弁は竜骨弁とも呼ばれます。重なり合っているので分かりにくいのですが翼弁が舟弁を包み込んでいる形です。
花の後ろ側から少し覗いているのが萼の一部です。

横から見たクズの花 横からクズの花を見てみました。

翼弁を除いたクズの花 翼弁を取り除いて舟弁を横から見たところです。

手前の翼弁と舟弁を除いたクズの花 手前の翼弁と舟弁を取り除いてみました。
普段は1本の雌しべを10本の雄しべが取り囲んだものが舟弁の中に隠れているのです。
10本の雄しべのうち1本だけは少し離れていてその隙間から昆虫が蜜を吸えるようになっています。
マメ科のこのような雄しべの形を二体雄ずいと言います。
こういう構造のため雄しべは1本ずつしっかりした花糸を作らずにすみ省資源が可能なわけです。

花弁の形 花弁を1枚ずつにして並べて見ました。
旗弁のつけ根はそっくり返っているので裏側になって見えていません。

蝶形花冠をしたマメ科の花は、昆虫が蜜標を目印にしてもぐりこむとき脚で翼弁と舟弁を押し下げます。すると舟弁の中に隠されていた雌しべと雄しべは押し下げられないので外に出てきて昆虫に花粉をつけたり、昆虫から花粉を受け取ったりします。昆虫が飛び去ると翼弁と舟弁は元の位置にもどり再び雄しべ雌しべは隠れてしまうのです。
時には、昆虫が去った後、元の位置に戻れない花もあり、それらは破裂型と呼ばれています。破裂型の花では受粉が終わった花とまだの花は我々人間にも見ただけで区別できます。


蝶形花冠の花にも様々な色があり、蜜標の色や舟弁の形が違っていますが構造は基本的には同じです。

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ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)
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(2008.9.18作成)
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