ソメイヨシノとスズメ

春になるとソメイヨシノをはじめ、何種類もの桜が花開きます。美しさに見とれる人、蜜に集まる鳥や虫たち。桜はバラ科サクラ属の木本です。
桜の花には蜜を求めてミツバチなどの昆虫の他に鳥たちもやってきます。メジロ、ヒヨドリは嘴が細長いので花の中心から蜜を吸えます。嘴が短くて太いスズメは花の根元をちぎって蜜を味わいます。
足元に花が1輪ずつ形のまま落ちていたら・・・ほとんどはスズメに齧られた花です。
数輪の花が一塊で花茎(花の下にある軸)ごと落ちていたら、もしかしたら体が大きいヒヨドリがぶつかって落としてしまったものかもしれません。
桜の花

ソメイヨシノの花の中を見てみました。
萼の内側には蜜がたっぷりあります。子房は萼の根元にしっかりついています。雄しべは萼の上の方の壁から生えていて、その外側に花弁がついています。
花の断面萼筒の中の蜜
雄しべの根元花弁のつけね

スズメに齧られて足元に落ちている花を見ると、萼筒が輪切りされたようになっているもの、その下から子房が突き出しているものの2つのタイプがあります。子房が出ているものは1割くらいでした。

突き出さないタイプ 突き出さないタイプ 萼から子房が
突き出ていない

突き出ているタイプ 突き出ているタイプ 萼から子房が
突き出ている
子房の傷 スズメがどういう齧り方をすると、子房を残せるのでしょう? 
よく見ると突き出ている子房には誰かに噛み付かれたような傷がついていました。
桜に群がるスズメを見ていると枝先に止まって、花の下側を嘴で噛みきり殆んどすぐに捨てます。
噛み切った時に萼筒の底にたまっている蜜をなめるとすぐに隣の新しい花にとりかかります。

一方むしられた花では花弁と雄しべは萼筒にしっかりついていますが、雌しべだけは宙ぶらりんになります。そこで花が地面まで落ちてくる間に、雌しべが下がって来るものもあるのではないかと思いました。

子房は蜜に浸っていたのでべたべたしています。萼の切り口からチョッと顔を出せば落ちてくる間に枝や他の花にぶつかって引っ張られてもっともっと顔を出すようになる・・・
どうも、スズメの齧り方が原因ではなく、落ちる途中でこのような違いが出てくるように思われました。
本当のところはどうなのでしょう? スズメに聞いてみたいです。

2015年春、シジュウカラがスズメと同じように桜の花の根元をかじって蜜を吸っているのを見ました。シジュウカラも学習したようです。


咲きおわりの頃の雌しべ ところで、ソメイヨシノは咲きはじめてから日がたつと色が濃くなるように見えます。
これは雄しべの花糸が赤紫色に染まってくるためです。この頃になると花粉をつけた柱頭は干からびた感じになって役目を終えます。(ソメイヨシノの場合は自家不和合性があるそうで本来だったら実をつけませんけれど)
受粉が終わると花糸の色が変わってくることはクレソン(オランダガラシ)やシャリンバイなどでも見かけます。これは、昆虫達に対して「もうこの花には来ないで良いよ」と伝える合図だそうです。
(2008.6.31作成 20015.04.02追記)
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