スダジイとツブラジイ(ブナ科シイ属)

私が住んでいる横浜市南部にはスダジイはたくさんありますが、ツブラジイは自生していません。公園で「ツブラジイ」の名札をつけた木を見つけ違いが分かるだろうと近くを通るたびに眺めていました。ところが何年待ってもこのツブラジイはまだ花も果実もつけたことがありません。
葉の表皮組織が2層ならスダジイ、1層ならツブラジイだそうなのですが私にはそれを調べる技術がありません。でも見た感じではスダジイと全く同じに見えるのです。間違った名札ではないかと思いつつ、本物のツブラジイを見たことが無いのでずっと気になって居ました。

ツブラジイ果実
2015年11月18日、別の公園で見たことのない黒い果実をつけた背の高い常緑樹に気が付きました。毛の生えた萼が反り返って中に黒い、固くて指ではつぶせない果実が付いて居る。葉はスダジより細くてやわらかいけれど色はスダジイにそっくりです。それがツブラジイでした。萼と思ったのは殻斗(いわゆるドングリのはかま)でした。
この頃にはスダジイの果実はもうすべて落下して地面に落ちて居ました。
スダジイとツブラジイは果実のつく時期も、つき方も、果実の形もスダジイとはかなり違うものでした。根元に落ちて居る果実を頼りに何本もあるスダジイと、点在するツブラジイを比較してみました。
慣れてくれば葉の手触り、幹の木肌等で見分けがつく木でした。

スダジイとツブラジイ 果実の比較

果実

果実の大きさ

果実

落下したスダジイの果実

果実

落下したツブラジイの果実

ツブラジイの果実はスダジイに比べると非常に小さく、色も黒っぽい。(左側の2個がスダジイ、右側の5個がツブラジイ)
落下した果実はスダジイは目につくが、ツブラジイはそのつもりで目を凝らさないと見えにくい。

スダジイとツブラジイ 殻斗の比較

果茎

スダジイの果茎

果茎

ツブラジイの果茎

スダジイの殻斗は半開きの状態で果実を落とすがツブラジイの殻斗は木について居る時から全開している。

ツブラジイの殻斗の内側はやわらかい毛におおわれている。スダジイの殻斗の内側は枝について居る時どうだったか見て居ないので分からない。

スダジイとツブラジイ 葉の比較

葉

葉表

葉

葉裏

いずれも、左側がスダジイ、右側がツブラジイ

大きさもかなり違うが、小枝につく葉の数もツブラジイのほうが少ない。
手触りはスダジイが画用紙だとするとツブラジイはコピー用紙というほどに手触りが違う。

スダジイとツブラジイ 幹の比較

スダジイ

スダジイ

ツブラジイ

ツブラジイ

スダジイ

スダジイ

ツブラジイ

ツブラジイ

スダジイの樹皮は深く縦方向に咲ける。ツブラジイの樹皮は割れ目は無いかあっても浅くまばらである(「日本の野生植物 木本1」)とあるが確かにそうだった。

スダジイとツブラジイ 来年果実が実る枝の比較

スダジイ

スダジイ

ツブラジイ

ツブラジイ

スダジイの方がツブラジイよりも太くてたくましい。

ツブラジイの蕾

ツブラジイ蕾

ツブラジイの蕾

スダジイ花

スダジイの花

ツブラジイは11月下旬の時点で花芽(蕾)が少数ながらできて居て雄花が開き始めて居るものもありました。スダジイの方はまだ花芽はできていません。

スダジイの花は今年の春(5月7日)のものです。ツブラジイの花は春になってから見たいと思います。

スダジイの個体差

スダジイの葉

スダジイの葉

たくさんあるスダジイを眺めてみると、葉の太さや長さにかなりの差ががありました。左の画像の葉はすべて別々の個体から頂いて来た葉です。もちろん私の手が届く範囲でその木の平均的な大きさのものを採取しました。

果実にも太くて短いもの、細長いものなどその木によって特徴があり、太い葉のものは果実も太い印象がありました。

(2015.12.10)
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