私が住んでいる横浜市南部の緑地で見かける野生のユリはヤマユリ、ウバユリです。ヤマユリは神奈川県の花になっている立派な花を咲かせる香りの高いユリです。どちらかというと明るい場所を好みます。
ウバユリは少しくらい湿り気のある谷などの樹林内でたくさん見られます。
５月頃にはテラテラと光る葉を伸ばし始めています。全体が緑のもの、葉脈に赤い色が付いたものがありますがどちらもウバユリです。

７月半ば、白い蕾を横向きにつけて花が咲き始めます。左の画像は横浜市南部で見たつぼみ、右の画像は木曽駒が岳のふもとで見たものですがこのように花数が多いタイプもあります。かつては花数が多くて背丈も高いものをオオウバユリと呼びましたが、最近ではウバユリと区別しないという説が有力になってきています。

花が終わると大きなふっくらした、かわいらしい果実をつけます。果実が熟してくると３つに分かれた部屋に薄い種子がびっしりと重なっているのがよくわかります。果実が割れてくると細い横向きの筋が目立ってきます。この隙間から風が吹き込んで軽い種子を持ち上げ、一番上からヒラヒラと種子が飛び出していきます。一度にどさっと種子が零れ落ちるよりも、ひとひらずつ飛び出す方がより遠く、あちらこちらの方角に運ばれるでしょうからそのための工夫ではないかと思います。

余談ですが「ウバユリ」という名前は「姥百合」という意味で、花が咲くころにはたいがい葉が枯れているので、お姫様が成人して花の十八になられた頃にはもう乳母は歯が抜けた姥になるのにたとえたからだと言われています。（牧野図鑑より）
温暖化が進んだせいか横浜市南部では花の頃にも葉が残っている株がかなりありますが、確かに５月頃の輝くような色ではなくなってきています。
種子が地面に落ち、芽を出し少しずつ大きくなり、地下の鱗茎が太ってきます。そして６〜８年かかって花を咲かせ実をつけるとその鱗茎は死んでしまいます。何年もの月日をかけて大きな立派な花を咲かせるのがウバユリです。（ヤマユリは花をつけるようになっても成長を続け何年も咲くことができます。）