大雪山  1998年8月

北海道の山はテントでないと行けない、ということでワンゲル部に入って居る息子に同行を頼んで行ってきました。
私は北海道の山も、テント泊まりも生まれて初めて! ヒグマは怖いけれど期待一杯でした。それにしても昔は息子を連れて・・・という感じだったのが、息子に連れていってもらうようになったわけです。
久しぶりの親子3人の旅です。

8月11日(月)

沼ノ原登山口→沼ノ原→五色ヶ原・五色岳→忠別岳キャンプ場
 
景色前日に層雲峡で一泊、早朝から登山開始です。花の季節には少し遅いせいで出会う人が殆ど居なくヒグマが怖くなりました。小型のラジオでは音も小さく役に立ちません。大きな声で話しながら歩いていましたがだんだん口が疲れて結局カウベルを手で振り回して歩きました。沼ノ原、五色ヶ原は花が素晴らしいところなので、花の季節にここだけを目的に来ても良いなー
少しずつ遅れた私が辿り着いた時には、息子と夫がテントを張ってくれていました。腰をかがめて入る込むと緑色のテントを通した光で自分も緑に染まるような気がしました。北海道では生水は飲んではいけないので大変です。食事の支度も息子の手伝い。テントの中につるした小さなランタンの中で燃えるろうそく。「うん、大雪山の中にいるんだ!」
 

8月12日(月) 

 忠別岳キャンプ場→忠別岳→高根ヶ原→白雲岳キャンプ場
今日もまずまずのお天気。コマクサも点々と咲いていてハイキング気分です。遠くに旭岳が見えてきました。
忠別岳頂上で風に飛ばされた私の帽子を走って取ってきて下さった背の高い男性。
「ありがとう!」
にっこり笑って顔を見ると外人さんでした。外国語は分からなくてもうれしさ、楽しさは通じました。
景色
景色 大雪山はなだらかで広いからとてものどかな気分を満喫できます。
平ヶ岳への道には小さいけれどきれいな池も。所々にオヤマノリンドウが咲いています。
白雲岳に向かう途中の岩だらけの場所でナキウサギを期待しました。
1回だけ岩の上に小さな動物が・・・でもあまりに短い時間だったので訳が分かりませんでした。
耳はあった→シマリス? でも尻尾は無かった→ナキウサギ? 
結局それっきりで確認できませんでした。ちらっと見て分かるようになるには何回出会えればいいのかなー?
登山道の右側の谷は緑が濃く鳥がたくさん居そうなムードでした。
あそこまで下りるのは大変だろうな、でも、きっと良いところだろう。話しながら少し行くとぎょっとする看板がありました。
人が行けないからあんなにすてきな森が残っているのかも知れません。
テントを張って一休みしてから雪渓の下の水場へ。登山道のほとりの草むらで小さな足音。じっとして待っていると草の切れ目で一瞬立ち止まり慌てて走り去っていったのはシマリス。
あの子の身長では最初は私が見えなかったのでしょう。驚かせてゴメンね。
雪渓がとけたばかりのところには濃いピンクのサクラソウが咲き始めています。エゾコザクラでしょう。 
夕飯が終わりゴロゴロしたくなる頃にまたもや水を汲んで来いとのこと。
「え〜っ、明日で良いじゃない」ところがダメ! いつ天気が変わるか分からないからできるときにしておくそうです。
明日の飲み水まで湧かして用意周到。
看板

8月13日(月)

   白雲岳キャンプ場→北海岳→黒岳キャンプ場
寝ている間に雨が降りました。私たちは昨日汲んでおいた水で朝食のしたく。お隣のテントでは傘をさして水くみに。「砂利が入っている」食べながら話しておられるのが聞こえます。雨が降ると水が濁ってしまうんだ・・・昨日汲んでおいて良かった。やっと息子の言ったわけが分かりました。

今日は一日雨。北海岳は霧の中。ギンザンマシコらしい鳥が鳴いて飛びましたが双眼鏡を出してなかったので確認できず残念でした。黒岳に着く頃にやっと雨が上がりました。黒岳キャンプ場には管理人がいました。

「荷物はテントの真ん中に置いて人が回りに寝るように」という注意がありました。
夜中にテント1枚の外側でピタピタ、ピタピタと軽やかな足音。いくらなんでもクマだったらもっと大きな音だろう、テントの外側から噛み付かれたらやっぱり怪我をするのだろうか? 荷物を外側にしておいた方が安全だったのじゃないかなー でも、管理人に言われたしなー・・・体は緊張して動かない、耳だけが足音を追っていました。

8月14日(月)

   黒岳キャンプ場→北鎮岳分岐→間宮岳→旭岳→姿見→旭岳温泉

朝、お隣のテントの学生さんが声を掛けてきました。
「あのー荷物は大丈夫ですか? 僕たちザックを破られて食料を奪われてしまって・・・」大慌てで外へ出ました。
少し離れた草地でキタキツネの親子が悠々とザックから盗み出した物を食べていました。
やっぱりザックを真ん中にというのが正解だったのです。
破られたテントやキツネが口を付けたからもう食べられないと分かっている食料の残りを穴を開けられたザックで持っていくことになります。
あと少しで登山が終わりなのか、それともこれからがまだまだ長いのか・・・気の毒で聞けませんでした。どうやら1年生らしく先輩に謝ったり、慰められたり・・・こちらも食料はぎりぎり必要な分しか持ってきていないので分けてあげることもできませんでした。

今日も一日小雨でした。北鎮岳のあたりは硫黄のにおいが一杯。中岳、間宮岳も霧の中。それでも足元には秋の草花が咲き始めています。道もなだらかでルンルン気分で歩きます。
思いがけないところに私にとっての難所がありました。旭岳への登りです。30度はあると思えるジャリジャリ石の上り坂。どこの山でもこんな場所はつづら折りに踏み跡が付いているのですがここには何もない。思い思いにまっすぐ登る人、下る人。立ち止まるとそのまま後ろに滑っていきそうで、怖くて息を付く暇もとらずに登り詰めました。
頭ではそんなに滑るわけ無いと分かっていてもやっぱり怖かった。この道は2度と通らない! しっかり決心しました。

旭岳頂上は霧で何も見えず寒いのですぐに下りました。やがて緑色を帯びた水をたたえた姿見の池が霧の合間に見えてきました。
ここまで来るとハイカーが多くなります。8月と言っても肌寒い日に薄着で凍えそうになっている人、子どもが元気に走り回り親がフウフウ言っている家族、逆に「おんぶー」と言われて困っているお母さん・・・
ロープウエイで下山、旭岳温泉で1泊。宿の入口にヒグマの剥製が飾ってありました。本当に大きい。出会わなくて良かった! 翌日は旭岳温泉周辺を散策。ヤマゲラ、ノゴマにも会えました。

大雪山は聞いていたとおり一回登ってしまえば起伏は少なく、広々としていて素晴らしい山でした。大きくてなだらかなので「○○岳」と書かれた標識を見ないと頂上かどうか分からないところもありました。また行動中の食料・燃料・炊事道具に食器、そしてシュラフにテント。水筒もいつもの倍の重さ。息子がだいぶ背負ってくれたけれど内地の山よりは2キロくらい荷物が重い。考えていた以上に脚が疲れて帰ってきてからしばらくの間は脚が痛み続けました。

(2004.3.31)
私の山登り