常念岳と蝶ヶ岳 2001年8月下旬

8月29日(火)曇  三股→前常念岳→常念小屋(泊)

まず駐車場に行く途中にある「延命水」で水筒をいっぱいにしました。とても美味しい水です。
登山口からはひたすら登り。前常念に近づくと岩場になりました。
花の最盛期は過ぎていますがウメバチソウはあちらこちらに咲き、オヤマノリンドウが大きな蕾になっています。ミヤマナナカマドの赤い実もあちらこちらに見えます。
曇り空の日にはライチョウが多いそうですが何回か出会うことができました。特に、前常念ではゆっくりと眺めることができました。登山道の真ん中で♀のライチョウが無心に餌探し。斜面を下りていってハイマツの中に隠れたと思ったら次には少し離れた岩の上に、しかも今年生まれの雛4羽と共に現れました。低くコォッ、コォッ、コォッ、コォッ、と鳴いていました。雛は親鳥より一回りくらい小さく、なんとなくフワフワしていました。

小屋のご主人に「今日はどちらから?」「三股からです」「そりゃぁ大変だったろう。よく頑張ったね」このコースを利用する人は今では2割も居ないと伺って、急坂では心臓がドキドキしたり脚が思うように上がらなかったけれど何だかちょっぴり嬉しくなりました。
8月末の平日とあって小屋も空いていて10人部屋に二組の夫婦だけというラッキーさでした。それにしても内地の山は小屋があって、しかもトイレがある。このありがたさは北海道の山に行って来ただけに身に染みました。

8月30日(水)曇時々晴  常念小屋→常念岳→横尾分岐→蝶槍→蝶ヶ岳ヒュッテ(泊)

今日は一番晴れてほしい日です。6時半頃出発。岩のゴロゴロした斜面を1時間ほど登って常念岳の頂上へ。常念の頂上は大きな岩だらけで小さな新しい祠がありました。すこーし下がったところで一休みしました。曇り空でしたが時折風が雲を払って雄大な眺めが見渡せます。槍ヶ岳から穂高連峰がひろがっていました。
登ったり下ったりを繰り返し、蝶槍と呼ばれている岩山のてっぺんで昼食。常念小屋付近から見た槍・穂高のながめは更に迫力を増して迫ります。雄大な景色に見とれて長い休憩をとりました。
大天井岳、西岳、槍ヶ岳、南岳、上高地・・・去年辿った道が見渡せます。槍の右手には北鎌尾根もくっきり。今さらながらずいぶん長い距離を歩いたものだと感慨ひとしお。そして、槍の左にはボリュームたっぷりの穂高連峰。おっかなびっくりのぞいたジャンダルムなど、懐かしく思い出されました。
(右の写真はいま下ってきた常念岳です)

常念岳
花 それにしても今回の山行きでは実に沢山のホシガラスに出会いました。この山がホシガラスのメッカなのか、今年がハイマツの当たり年なのか・・・
自宅近くで見るハシブトガラス程度にふつうに飛び交っています。登山道の端にはホシガラスが食べたあとのハイマツの実がたくさん落ちていました。

遠景は山々、体のまわりはお花畑、足元には小さい草の花や赤い実。ルンルン気分です。

樹林帯を歩いていたとき道ばたにやや大きな獣の糞を発見。熊じゃぁないよねー、でもカモシカではない、何だろう・・・? 
おっかなびっくり歩いていると目の前の木に大きなニホンザル。思わず立ちすくむ我々。猿は少しこちらを睨んでいましたがやがて我々が通り過ぎてきた道に下りました。そして、むしゃむしゃと道ばたのイネ科の草の実を食べ始めました。人間がお米を食べるように細かくてもイネ科の種子は栄養があるのでしょう。見とれていたらまた木の枝がざわざわ鳴ります。今度は子猿。親の方へ行きたい! でも私たち二人が怖い! ・・・らしい。
私は懸命に「大丈夫よ」と笑顔を向けるのですが子猿には通じません。木の枝の上の方へ登っていきます。そして、枝を大きく揺すって隣の木の枝に移りたがる。でも今ひとつなのでしょう。飛び移りません。・・・・・・親猿が呼んでいます。何回かトライする子猿。かわいそうだから進みたいのですが進めば子猿に近づいてしまうので我々も立ち往生。内心、親猿が怒ってやってこないかハラハラドキドキ。やっとのことで子猿が枝移りに成功したとき、本当にホッとしました。
蝶ヶ岳ヒュッテの赤い屋根が見えてきて今日の歩きも終わりです。蝶ヶ岳ヒュッテでも一畳に一人の割で眠ることができました。

8月31日(金)曇   蝶ヶ岳ヒュッテ→三股→横浜

夕べの天気予報では絶望的な日です。夜中にかなりひどい雨音もしていました。あきらめきって朝食へ。隣に座った若者が「外を見てみました?」と話しかけてくれました。「だって、雨でしょ?」とあきらめきった私。「山が見えるんですよ」・・・
大急ぎで朝食を終え外へ飛び出しました。まだ暗い時間ですが、山並みがクッキリ見えます。裾の方は雲海。燕・大天井岳・西岳が手前に続きその後に、槍ヶ岳から穂高連峰、少し離れて噴煙を上げる焼岳、さらに乗鞍・・・青空をバックにというのも見たかったけれど、中腹から雲に取り巻かれている山々は実に荘厳です。ここから見える景色の主役は穂高連峰。常念岳から見たときは槍ヶ岳が主役。どちらもそれぞれに素晴らしい! もっとも、目の前に見ると大キレットはとても大変そう。槍穂高の縦走はしたくないなーなと怖じ気づきました。
今日のコースは下りが主体。私は下り、特にザラザラした小さな砂利混じりの下りは苦手。実際にはそんなに滑る分けないと分かっていても感覚的には怖くて仕方ないのです。ゆっくりゆっくり下りました。
蝶ヶ岳からの道は、樹林が主体で、時々お花畑もあります。蝶ヶ岳往復でも充分楽しめることが分かりました。
サラシナショウマが結実を始めていていつも見るときは真っ白なブラシなのにほんのりとピンクも交ざり不思議な気がしました。鳥も多い。空気も良い。こんな所をマイペースのゆっくりさで歩き山を満喫できるのは幸せ、何よりの贅沢と言えるでしょう。

山小屋では水が足りず、殆ど登山前に汲んでいった「延命水」で3日間を過ごしましたが、帰りにまた「延命水」を汲んでお土産に。麓には町営の大きくてきれいな温泉がありゆっくり疲れをとり、のんびりと昼食をいただくことができました。

サラシナショウマ

私の山登り