笠ヶ岳

 2002年8月 

北アルプスの山々に登ると、遠く近くに見えていたきれいなカーブの笠ヶ岳へ行ってきました。

8月26日 晴 横浜→新穂高温泉→鏡平

11時頃に新穂高温泉に到着。鏡平に向かいました。「笠新道は高度差1400mを一気に登る大変な道だが、鏡平から行けば気軽なコース」事前に読んだ本にあったのですが、コースタイムが5時間20分あります。今日ばかりは私たちも懸命に歩かないと小屋に着くのが暗くなってしまう・・・せっせと歩きました。
鏡池1時間ほどで笠新道への分岐点にある水場につき一休み。わさび平小屋を通り越して少しずつ登り道になってきました。花の時期は終わっていると思いこんでいたのに夏の花もいくらか残り、秋の花も咲き始め、脚と呼吸以外はとても楽しい道でした。途中にある小さなお花畑には、大きな岩に白いペンキでイタドリが原、シシウドが原と書かれていました。
自然石を組んで作った階段のような道を登り詰めると、こじんまりとした鏡池です。静かな水面に槍、穂高の山々が映っています。池の縁にしつらえられた木製のベランダにはたくさんの方が三脚を立ててカメラを構えておられます。こちら側から見ると、同じ山でもいつもとは違う形に見えます。槍ヶ岳は小槍も見えて尖った大小の三角が2つ、大キレットをはさんで穂高の山々。こちらから見る方が迫力があります。山荘は家庭的なムードのきれいな小屋で、小屋の前と横に小さな池がありました。

8月27日 曇時々晴 鏡平→抜戸岳→笠ヶ岳

今日は時間がたっぷりあるので、のんびり楽しみながら歩けます。
弓折岳までは林の中の登り道。2ヶ所に種子がたくさん入った大きな獣の糞がありました。もしかしたら熊? 
弓折岳で双六方向へ行く人と別れます。笠ヶ岳に向かう人の方がずっと少ないようです。ここからはなだらかな起伏の道でした。秩父岩がそびえるお花畑の秩父平で昼食。チングルマの果実がまだ赤みを残して風に揺れています。
雲があるので遠くは見えない代わりに、足元の花達にゆっくり挨拶できました。顔見知りになったお二人と笑いあい語り合いながら、あまり早く小屋に着かないようにゆっくりと行きました。笠新道から登ってくる道とであい、登山道をはさんで両側が岩になっている抜戸岩をすり抜けると笠ヶ岳山荘への登りです。
大きな岩がゴロゴロした坂道ですが、良く整備されていて歩きやすいように平らな岩が配置されていました。
笠ヶ岳 天気予報では明日は雨。曇ってはいるけれど今日の内にと小屋で一休みしてから山頂へ。15分くらいで登れます。登り詰めたところに小さなお社。そこからちょっと左に下り登りなおした所が三角点のある頂上です。大きなケルンが数個作られていました。
それにしても遠くから見ていた笠ヶ岳は、たおやかな、優しいカーブのイメージでしたが、近くで見ると平べったい岩が積み重なった山でした。森林限界を超せばまぁそんなものなのでしょうが、意外な気がしました。
小屋は5年前に建て替えられたそうで、明るくきれいでした。水は雨水を利用しているので飲料水はペットボトルを購入することになっていました。

8月28日 晴 笠ヶ岳→笠新道→新穂高温泉

「晴れてるぞ」という誰かの声に飛び起きました。小屋の前に広がる山々。槍の向こうから朝日が昇ってきました。風が強くて寒いけれど見ていたい。槍、穂高、黒部五郎、薬師、遠くに乗鞍、八ヶ岳、富士山も見えます。

笠新道への分岐までは昨日来た道。振り返る笠ヶ岳は大きすぎてカメラに入りきれません。右も左も山。山。山。
雨を覚悟していただけに、満足度は200%以上です。剣岳も見えてきました。双眼鏡で眺めると槍ヶ岳の頂上に何人もの人が居るのが分かります。なんだか仲間のように思えて嬉しくなりました。ちょっと歩いては感激! 振り向いては「しあわせ!」とため息が出てしまいます。昨日はすぼんでいたミヤマリンドウも陽をあびて笑っているように満開です。

笠ヶ岳
笠ヶ岳 分岐から一登りして眺望を楽しんでから、いよいよ下りです。最初は岩の下り坂。でも重太郎新道よりずっとずっと簡単、南岳の下りよりもずっと簡単。最初は自分の歩き方が上手になったのかと思ってしまいましたが整備が整っていたからでした。
岩が終わると杓子平のお花畑。ここはカールだそうですが黄葉の始まったコバイケイソウがたくさんありました。花の咲く年に、花の季節に来たら素晴らしいでしょう。今はミヤマシシウド、ヤチトリカブトなど秋の花々。足元のハイマツの間に小さな花や赤い実が見えます。秋の空は澄みわたり帰りたくなくなりました。
中間地点でゆっくりと一休み。道の脇にザックが一つ転がっていました。人の気配はしないし、なんだか気になりました。
杓子平が終わると林の道へ。地図で見ていた時はここからは眺望はダメと思っていたのですが、途中で何回も山が見えます。急な下りと言われていましたが葛折りになった道はそれほど険しくありません。ただ山が見えるということは日当たりも良いわけで下っているのに暑いこと。所々に崖の窪みから涼しい風が吹き出す天然クーラーがあり一息つけました。確かに長い下り道ではあるのですが、道も整備されているし三伏峠の下り(塩見岳)に較べると岩場、カール、眺望の良い林の道と変化があり飽きません。
笠新道を下り終えると初日に休んだ水場です。ザックを下ろして顔を洗ったり水を飲んだりしていると、一人の男性が下りてきました。なんと驚いたことに、今朝笠新道を登って笠ヶ岳まで往復してきたそうです。杓子平に放置されていたザックはこの方の物だったのです。お年は62とか。あきれるやら感心するやらでボケーッとしてしまいました。やっぱり私はこの道は登りたくない、特にこんなに晴れた暑い日には・・・


見られた花

アオノツガザクラ、アキカラマツ、アキノキリンソウ、アラシグサ、イケマ、イヌトウバナ、イワアカバナ、イワオトギリ、イワショウブ、イワニガナ、ウサギギク、ウメバチソウ、ウラジロタデ、エゾシオガマ、オオレイジンソウ、オニルリソウ、オヤマノリンドウ、ガガイモ、カメバヒキオコシ、キツリフネ、キヌガサソウ、キンミズヒキ、クサボタン、クルマユリ、クロクモソウ、クロバナヒキオコシ、ゲンノショウコ、コキンレイカ、ゴゼンタチバナ、コバイケイソウ、ゴマナ、サラシナショウマ、シシウド、シモツケソウ、ジャコウソウ、シラネニンジン、ゼンテイカ、ソバナ、ダイコンソウ、タカネスイバ、タカネマツムシソウ、タカネヤハズハハコ、タカネヨモギ、タテヤマアザミ、タテヤマウツボグサ、チシマギキョウ、ツルアジサイ、ネジバナ、ノアザミ、ノリウツギ、ハクサンイチゲ、ハクサンフウロ、ヒトツバヨモギ、ベニバナゲンノショウコ、ホソバヤマハハコ、ミズタマソウ、ミソガワソウ、ミツバオウレン、ミヤマアカバナ、ミヤマアキノキリンソウ、ミヤマカラマツ、ミヤマキンバイ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマコウゾリナ、ミヤマコゴメグサ、ミヤマダイコンソウ、ミヤマホツツジ、ミヤマリンドウ、モミジカラマツ、ヤチトリカブト、ヤナギラン、ヤマアジサイ、ヤマウド、ヤマハハコ、ヤマホタルブクロ、ヨツバシオガマ、ヨツバヒヨドリ、リョウブ

実が目立った植物

アカモノ、アキカラマツ、ウラシマツツジ、ウラジロナナカマド、エンレイソウ、オオイタドリ、オオカメノキ、オオヒョウタンボク、クロバナイチゴ、コケモモ、ゴゼンタチバナ、コバイケイソウ、サンカヨウ、ショウジョウバカマ、シラタマノキ、タケシマラン、チングルマ、ネバリノギラン、ハクサンイチゲ、ハリブキ、ムラサキツリバナ、ミヤマハンノキ、ヤグルマソウ

出会った鳥

アマツバメ、イカル、イワツバメ、イワヒバリ、ウグイス、ウソ、オオタカ、カケス、キジバト、キセキレイ、コガラ、シジュウカラ、セグロセキレイ、トビ、ハシブトガラス、ヒガラ、ホオジロ、ホシガラス、メボソムシクイ、ルリビタキ

笠ヶ岳ではライチョウをよく見かけると聞いていましたが一度も出会えませんでした。たまたま運が悪かったのだと良いのですがライチョウの個体数が減ってきているのではないかと気がかりでした。

私の山登り