剣岳・仙人池

(2008.10.6-10.9)
1995年8月、室堂から入って剣岳に登り仙人池に行きました。その時は仙人池で曇っていたので池に映る裏剣を見ることができず残念でした。
2006年10月に紅葉の仙人池を見たいと計画したのに室堂に40cmの積雪があり断念。
やっと13年ぶりに実現した秋の仙人池への旅です。

10月6日 自宅ー黒部ダム

朝から雨でしたが明日から天気が回復する予報なので黒部ダムまで行くことにし、信濃大町から扇沢まで乗ったタクシーの運転手さんと話が弾みました。「このあたりにも熊が居るのですか?」「もちろん居ますよ。たまに車で走っていて出会うことがあります」
と、その時! 車の前を真っ黒な熊が車道を横切ったのです。ビックリしました。大きさから多分、大人のツキノワグマでした。
トロリーバスで黒部ダムについた頃はほぼ雨がやんでいて付近を散策しました。紅葉が始まっていて足元にはマイヅルソウの赤い果実も。はじめて見たツクバネソウの果実は花から想像つかない形でした。
ツタウルシの紅葉 ツクバネソウの実

10月7日 黒部ダムー内蔵助平ー剣沢ー真砂沢ロッジ

黒部川沿いの紅葉 最初は下の廊下に行く道と同じです。黒部ダムからどんどん坂を下り、黒部川沿いをたどります。滝のすぐ近くを通る細い道を通り、川岸のゴロゴロ石を歩いたり。黒部峡谷のイメージが少し出てきたあたりで登りになりました。
下の廊下コースと分かれたあたりからかなり道は悪くなります。川の増水や雨のために崩れた急斜面はロープに捕まらないと登れないほど足元が不安定だったりします。

内蔵助平にて 大きな岩は脚をかけるところが無くたまたま下りてこられた団体のリーダーがつけられたロープを拝借してやっとよじ登れました。
内蔵助平に着くと素晴らしい紅葉でした。黄色の黄葉が多い中にところどころ目が覚めるような赤がまじります。水のない川底のようなゴロゴロ石の登り道が延々と続き、ハシゴ谷乗越に来ると剣岳が紅葉の間から迫力ある姿を覗かせていました。

川底みたいな道 剣岳

川にかかる丸太橋(10月9日には撤去されていたそうです)を渡り、河岸をさかのぼり山道に入ってやっと真砂沢ロッジに着いたのはそろそろ暗くなる頃でした。
この道は13年前に逆コースで通ったはずなのに、こんなに大変だったかと思うほど予想外に時間がかかり疲れました。13年分歳をとったためなのか、道が荒れたためなのか?

10月8日 真砂沢ロッジー二股ー仙人池ヒュッテ

二股にて この日はコースタイム約4時間なので途中をゆっくり楽しむことが出来ます。昨日渡った丸太橋を右手に見ながら川沿いに下り、時々山道に入っては川に戻ることを繰り返し、1時間くらい歩くと二股の大きなつり橋に到着。ここからは両側に紅葉の斜面を従えた剣岳が正面に見え思わず声をあげるほどでした。
しばし景色を堪能してから右側の急坂を登って仙人池へと向かいます。
(二股の吊り橋は13日に撤去されました)
鮮やかな紅葉剣岳三ノ窓雪渓
このコースに入ったら、今まで感動していた紅葉は何だったのだろうと思うほど、更に色とりどりになり美しさが増してきました。
道はほとんどが急な上り坂で汗びっしょりになりながらも脚を止めるたびに感激で胸がいっぱいになります。木々の間から見える裏剣の雄姿。空の美しさ。たびたび現れるリンドウの花。それでもヤッパリ疲れましたけれど・・・
やっと池の平との分岐にくると仙人池ヒュッテの赤い屋根に向かって木道が続きほっとしました。ところどころにある木道と木道の間の石ころ道がつらいくらいに昨日の疲れが脚に残っていました。木道を歩いていると草紅葉と木々の紅葉が一度に見えてのんびりできます。
懐かしい仙人池ヒュッテのおばぁちゃんの笑顔と暖かいお茶に迎えられました。今回はお昼少し前に仙人池に到着できたので念願の仙人池に映る裏剣をじっくり見ることができました。
木道から仙人池にうつる裏剣

10月9日 仙人池ヒュッテー仙人温泉ー黒部峡谷ー阿曾原小屋

朝焼けの裏剣 朝食を頂いているとおばぁちゃんが「良い色に染まってきた」と教えてくださいました。朝焼けで裏剣が赤く染まるのです。
写真でしか知らなかった景色を自分の目で見ることができました!
夢のような気分です。同宿の皆さんとともにカメラを向けたり見とれたり・・・
黄葉の山 6:30頃、後ろ髪を惹かれる思いで阿曾原小屋方向への道を下り始めました。まずは仙人温泉までの下り道。黄葉の美しい斜面を見ながらハシゴがあったり、水が流れる道を下ったりけっこうキツイ道でした。仙人温泉の小屋をすぎ川を渡り少し上ると湯気が立ち上る仙人湯。お湯に浸かったら疲れが取れて気持ち良さそうだけど時間が無くなるからあきらめました。
旗? やがて去年(2007年)に開通したばかりの雲切新道に入ります。土はまだ固まっていないのかフワフワしていますが笹や木の根があってかなり歩きにくかったです。
この前来たと気はこの道が壊れて通行止めだったので真砂小屋方向へ引き返したので初めての道です。
木の間に旗の様に布が並んでいる奇妙な場所からハシゴが始まりました。この旗は中央に仏像みたいな絵があり周囲は横文字がいっぱい。何かの信仰なのでしょうか?
ここから先は階段やハシゴ以外の場所には、至る所にロープが付けられ過保護じゃないかと思えるほどですが、足元の根が多かったり、見た目よりは傾斜が急なので助かりました。ただ階段の横木を止める杭が厚さ5mmはありそうな鉄の直角に曲がったもので横になっている丸太より5−10cmほど突き出ているため引っかかりそうで怖いです。

足元に注意しながら下っていきましたが、仙人谷ダムが見えてきて、あと1時間ちょっとで阿曾原小屋というあたりで、私が階段を転がり落ちてしまいました。
メガネが壊れ、ウエストポーチはベルトが切れて飛んでしまいました。ストックをつくと手が痛い、背中も痛む状態だったので、恐る恐る歩きながら仙人谷ダムまで降りました。
ダムに行くには垂直に近いアルミのハシゴをいくつも下りなくてはなりません。ハシゴの下はダムの水。両手は痛い・・・怖かったけれどどうにかダムにたどり着き、ここでこの山旅を中断することにしました。
阿曾原温泉はとてもよいお湯だそうで楽しみだったのですがメガネ無しでの山道、そしておそらく混んでいるだろう山小屋ではあちこち痛む体では眠れないでしょう。残念でしたが今まで見てきた美しい紅葉に満足することにしました。

人里に下りるために工事のためにだけあるトロッコに乗せていただいたり救急車を呼んでおいてくださったりと色々な便宜を図ってくださった関西電力の皆さんにとても感謝しています。
黒部市民病院で右手親指を固定、血液検査などをしていただいて一晩様子をみまもっていただいて帰宅しました。右手親指の第一関節が折れていました。

(2008.10.14)
景色などの大きな画像を集めました。

私の山登り