「屋久島なら一緒に行く」という息子共と宮之浦岳に登ってきました。家族4人揃っての旅は実に15年ぶり。それだけでも嬉しいのに屋久島です! 屋久島は雨が多いので有名ですがやはり宮之浦岳は雨に降られました。それにしても屋久杉を始め巨木が多い、透明で豊かな水流、苔やシダ類が豊富、始めて見る植物が多い、今まで何回も見たことがある鳥にそっくりでも声が微妙に違う、など見る物聞くもの全てに感激した日々でした。 4月30日 雨 羽田空港→鹿児島空港→屋久島空港 (安房泊)家を出るときから雨でしたが屋久島に着く頃にはかなり小降りになりました。28日は風雨が強く飛行機が欠航したとか。まずまず幸運な方です。飛行機から見た鹿児島空港近辺や屋久島空港近くの針葉樹林は木々が三角形に尖っているものが多く、自宅近辺の杉林はほとんど成長を止め先が丸くなっているだけに違いを実感しました。 安房(あんぼう)の宿の周辺を歩くだけで見慣れない植物に出会いました。 ブクリョウサイ(キク科)、ヒトツバ(シダ植物)、花の直径が2pもあるコナスビ(サクラソウ科)、アコウ(クワ科)、三宅島で出会って以来のウスベニニガナ(キク科)やフウトウカズラ(コショウ科)の花・・・ 5月1日 曇後雨 荒川口→ウィルソン株→大王杉→夫婦杉→縄文杉→新高塚小屋 (新高塚小屋泊) |
![]() | 6時にタクシーに来てもらい出発。同宿の方々は4時には出発されたとかでびっくりしました。荒川口からはトロッコの軌道を歩きます。鉄橋があると聞いて怖かったのですが真ん中に板が敷かれていたのでホッとしました。サクラツツジ、ハイノキが咲き足元には白い小さなスミレが咲いていました。 | ![]() |
始めて聞く美しい囀りの主を捜すと、木のてっぺんの枯れた枝先に止まったキビタキです。普段見るキビタキよりも喉に赤みが少なく真っ黄色、少し太く低いさえずりは合間にきしむ様な音が入ります。これがヤクシマキビタキなのでしょうか? 軌道脇の草むらにシカが出てきました。丹沢で見るシカよりずっと小型のシカでヤクシカと言うそうです。 軌道が終わると木道の登り坂、雨が降り始めました。やがて切り株の中に10畳ほどの広さがあり中に祠のあるウィルソン株、2番目に太い大王杉、2本の杉から伸びた枝が繋がっている夫婦杉、そして一番太い縄文杉と圧倒されるほどの巨木が次々に現れました。 |
![]() ウィルソン株 |
縄文杉までの間はピストンで杉を見に来る方が多く道も混雑していましたがそのあとはいよいよ登山ムードとなり、めっきり人が減りました。 名前がつけられていない杉でも太いものが沢山あります。赤っぽい肌のヒメシャラも、ヤマグルマもあまりの太さに驚きました。木々がここまで育つのに要した気の遠くなるような時間を思い感無量です。 |
![]() 縄文杉 |
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3時頃に到着した新高塚小屋は2階建ての無人小屋です。たくさんの人でごった返していました。念のためにテントを持ってきて助かりました。そのテントも張る場所がやっと見つかる有様。夕方遅く到着された方は通路にシュラフだけで寝たり、傘をさして一晩中座っていたりだったそうです。 | ![]() |
5月2日 雨のち晴 新高塚小屋→宮之浦岳→花之江河→小花之江河→淀川小屋→淀川入口 (安房泊)朝は雨が小降りになりヤクシカがすぐ近くに来て水たまりの水をなめるように飲んでいました。テントを畳んでいよいよ宮之浦岳を目指して出発。いきなり急な上り坂です。段差が大きく私の腰丈の所もあります。腕の疲れる山です。道はぬかるんで靴がうまったり、斜面が川になっていたりします。 それにしても風の強い山でした。第一展望台、第二展望台と雨で遠くは見えませんがアセビの花が咲き、ヤクシマシャクナゲの蕾が膨らんでいました。ヤクシマダケの茂みの中を抜けたり、岩を登ったりしてついた宮之浦岳頂上も展望はきかずとても寒かったので大急ぎで下りました。 下りも段差がきつく私は腰を下ろして滑り降りなければならないところが何ヶ所もありました。やがて随所に木道や階段が出てきて歩きやすくなると花之江河(はなのえご)、小花之江河(こはなのえご)の高層湿原につきました。まだ雪解け直後なのか花は咲いていません。一休みして淀川小屋に向かいました。この道はスギやツガ、ヒメシャラなどの太い根が張り巡らされていて、実に歩きにくく時間がかかりました。 雨が上がってきて、澄んだ水が豊かに流れる淀川に見ほれ、淀川小屋に到着。水がとても美味しかったです。雨具をしまって淀川(よどごう)登山口まで根っこで歩きにくい道を下りました。頼んでおいたタクシーで戻る途中親子連れのヤクシマザルと出会いました。 |
5月3日 晴 ヤクスギランド→紀元杉→栗生 (宮の浦泊) |
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今日と明日はレンタカーを借りての行動です。ヤクスギランドへ向かう途中にハプニング! 整備された道は空いていて気持ちよいドライブだったのですが駐車車両がいました。「おや? 猿だ!」と止まったのが運のつき。止まっていた車のボンネットから下りたヤクシマザルが私たちの車のボンネットへ。しっかりとワイパーを掴んでいます。猿にも指紋があることが分かりました。運転席の真ん前です。ティッシュペーパーを丸めて投げても無視。ゆっくり走って急ブレーキを掛けると歯をむき出して怒ります。猿にはテリトリーが有るはずと少しずつ走って行くのですがどうしても下りてくれません。きっと餌をもらった記憶があるのでしょう。ストックを窓から出して降り回してやっと下りてくれましたが横へ回ったのを確かめるまでこちらは動けません。言葉が通じれば良いのに・・・ |
ヤクシマランドという名前から公園的な場所を想像していましたが、まったく違いました。 道は整備されていますがあとは原生林のまんま。たくさんの太い杉、水量豊かな流れ、苔むした木や石・・・山に登らなくても充分にここで屋久島の森を楽しめました。 更にまん丸の二重になった虹が我々を歓迎してくれました。外側の輪はかなり色が薄くなっていましたが二重の虹は初めてです。 |
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車で少し上って紀元杉を見、グンバイヒルガオがあると聞いた栗生の海岸へ向かいました。もちろん花はまだでしたが独特の葉を見つけました。その近くに黄色っぽい細い糸の漁網を投げ捨ててあるようなツル植物の茎が沢山ありました。あまり美しくないので写真を撮らなかったのですがあとでスナヅル(クスノキ科)という珍しいものと知りました。ここではお腹が黒く背がグレーの大型のアジサシを見ましたが本を調べても該当する種が無く名前が分かりません。宿へと向かう途中でまだ葉の出ていない大きな落葉樹の枝で採食している5羽のズアカアオバトにも出会えました。 |
5月4日 晴 白谷雲水峡→屋久島空港→帰宅今日は白谷雲水峡へ。昨日のヤクシマランドよりもっと原生林のムードが強い場所でした。映画の「もののけ姫」の舞台になったそうで若い女性が目立ちました。高い木の幹に着生するヒカゲツツジの黄色い花、サクラツツジは白っぽいものからピンクが濃いものまで沢山あります。ハイノキ、クロバイの白い花、そして鬱蒼たる緑の木と、幹や根や倒木や石にまでびっしりと生えている苔とシダ。苔の間から芽を出して育っている様々な段階の木。あちこちにある美しい急流。2時間コースを3時間かけて堪能し飛行場へ向かいました。 屋久島は話しに聞いたよりも素晴らしかったです。これだけ森が豊かだと倒木も美しく命の循環というのはこういうことなのだろうと感じました。クズやススキが生い茂る自宅近くの緑地とはまったく違っていました。 |